前立腺とはどんな臓器かご存知ですか?前立腺という名前を知っていても、体のどこにあって、どんな働きをしているのか答えられる人はあまりいません。男性にしかない前立腺という臓器について知っておきましょう。
「前立腺」という臓器は、名前を聞いた事はあっても、それが体のどこにあるのか、どんな働きをしているのか知っている人は少ないのではないでしょうか?
前立腺は男性だけにある臓器で、生殖器の1つです。前立腺がなくても生きていく事はできますが、生殖活動のためにはなくてはならないものです。しかし、その働きやしくみにはまだ不明な部分も多く、「未知の臓器」と呼ばれる事もあります。
前立腺はちょうど栗のような大きさと形をしており、重さは成人で15〜17g、大きさは3cm程度の臓器です。生まれてから思春期くらいまでの前立腺は小さいのですが、成人になるにしたがって男性ホルモンの影響を受けて大きくなります。
前立腺の外側はしっかりとした被膜に包まれており、膜の内側には前立腺液を分泌する腺などが存在します。さらに、前立腺の内部は尿道の周囲にある内腺(移行域)、その周りの中心域(前方域)、外線(辺縁域)の3つに分かれています。
前立腺の病気といえば前立腺肥大症と前立腺がんが最も知られていますが、前立腺肥大症は内腺に発生し、前立腺がんは外腺に多く発生します。
前立腺はちょうど膀胱の真下にあり、膀胱の出口あたりから尿道を取り囲むように位置しています。前立腺の前には恥骨があり、後ろには直腸があります。
ちょうど挟まれるようにあるため、肛門から指を5cmくらい入れて直腸の壁を触ると、直腸の壁越しに前立腺を触ることができるため、医師は触診で前立腺の状態(形や大きさ、硬さ)を確認することができます。
正常な前立腺はちょうどゴムボールのような弾力のある硬さをしています。このように前立腺の状態を直腸から直接触って調べる事を直腸診といいます。
前立腺下側の尿道が出たあたりには外尿道括約筋と呼ばれる筋肉があり、膀胱出口付近の筋肉と協力して尿が漏れないようにしています。また、前立腺の表面には「サントリーニ静脈そう」と呼ばれる静脈の束が存在しており、前立腺の両サイドには勃起に関係する神経が血管とともに走っています。
このように、前立腺は尿の排泄を調節する筋肉やたくさんの血管、神経に囲まれているため、前立腺の摘出手術は難易度が高く、手術後の後遺症のリスクも十分に考慮する必要があります。
前立腺は思春期になると前立腺液を分泌し、精液の一部をつくる働きがあります。この前立腺液は精子に栄養を与えたり、精子を保護する役割を果たしています。前立腺液は男性ホルモンによってつくられ、精嚢から分泌される精嚢液と混ざり合って精液の液体部分をつくります。
この液体部分を精漿(せいしょう)と呼び、前立腺液は精漿の15〜30%を占めています。前立腺液は粘り気のある乳白色をしており、クエン酸や亜鉛、マグネシウム、カルシウム、果糖などが含まれています。
精巣で造られた精子は射精管を通って尿道に分泌されますが、その時に前立腺から分泌された精漿と混ざり合って精液となります。
また、前立腺は膀胱の真下にあることから、排尿をコントロールする役割も果たしています。これは前立腺の中にある平滑筋と、前立腺下部になる外尿道括約筋が収縮と弛緩をすることで排尿の調節が行われます。
このほか、前立腺液のタンパク質には前立腺特異抗原(PSA)が含まれています。前立腺癌になると血液中のPSA値が高くなることから、PSAは前立腺癌の腫瘍マーカーとして用いられています。