前立腺癌の検査を行うには、まず医師による問診のほか、排尿障害のチェック、尿検査、尿流量測定検査、残尿検査などを行います。これらの検査で何がわかるのか知っておきましょう。
前立腺がんに限らず、どの病気もまず始めに問診が行われます。問診とは医師が口頭で患者の自覚症状や排尿障害の有無、排尿障害がある場合はその状況、病歴、現在治療中の病気の有無などを直接聞き、患者の病状やこれから行う検査を判断するためのデータとして、カルテに記録します。
病院によっては診察の前にあらかじめ問診票が渡され、自分で上記の問診項目を記入してから医師の問診に臨むところもあります。自覚症状はすぐに答える事ができますが、既往歴や家族歴などはあらかじめメモ紙に書いて準備しておくと伝え漏れが防げます。
問診で聞かれる一般的な質問項目には以下のものがあります。
自覚症状
排尿時に感じる症状や、尿が膀胱にたまっている時に感じる症状、そのほか日常生活の中で感じる身体の違和感や痛みなどの自覚症状を確認します。
排尿状態
前立腺の病気では排尿障害が起こりやすいため、排尿に異常がないか、排尿時に痛みはないか、排尿後の違和感(残尿感など)はないか確認します。排尿障害の有無や程度の確認にはI-PSS(国際前立腺症状スコア)を用いて評価します。
I-PSSとはアメリカの泌尿器科学会が作成した前立腺の症状を評価する方法で、7つの質問から構成されています。質問には過去1ヶ月程度の排尿の状態を点数で回答し、その合計点数によって排尿障害の状態を把握します。
既往歴
過去にどのような病気をしてきたのか、現在治療中の病気があるのかなどを確認します。排尿障害など泌尿器に関わる症状は前立腺の病気に限られた症状ではなく、糖尿病や腎臓病、脳神経疾患でも現れる事があります。そのため、既往歴を確認することはとても大切です。
年齢・家族歴
前立腺がんや前立腺肥大症は50歳以上の人に多く、加齢とともに発症率は高くなるため、年齢確認は最も基本の確認事項です。また、前立腺がんの発症リスクには遺伝性も疑われており、同じ家系や家族で発生しやすいことがわかっています。そのため、家族の病歴も併せて聞かれることがあります。
使用薬
抗アレルギー薬や抗不整脈薬、精神安定薬などは、まれに排尿機能低下の副作用を引き起こすことがあります。そのため、現在治療中の病気で薬を服用している場合は、どのような薬を服用しているか確認します。
以下の設問ついて、自分の最近の状態に当てはまる数字を選択し、それぞれの点数を合計します。
質問 | なし | 5回に1回未満 | 2回に1回未満 | 2回に1回くらい | 2回に1回以上 | いつも |
---|---|---|---|---|---|---|
排尿のあと、まだ尿が残っている感じはありますか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿のあと2時間以内にもう一度トイレに行くことはありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿の途中で、尿が途切れることがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿を我慢するのがつらいことがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿の勢いが弱いと感じることがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿する時に、いきむことがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
就寝してから朝起きるまでに何回トイレに行きましたか? | 0回 0 |
1回 1 |
2回 2 |
3回 3 |
4回 4 |
5回以上 5 |
≪合計点の結果≫
※以下は前立腺がんの重症度を表すものではありません
0〜7点:軽度の症状あり
8〜19点:中程度の症状あり
20点以上:重度の症状あり
この点数からわかることは排尿障害の程度であり、前立腺がんの重症度を表すものではありません。この合計点が13以上の場合は前立腺になんらかの病気がある疑いがありますので、すぐに病院を受診することをお勧めします。
尿検査とは専用の紙コップに尿を採り、尿の色やにごり、臭気、尿中に含まれる組織や成分を調べる検査です。健康診断では必ず行う一般的な検査であるために多くの人が経験したことのあり、腎臓から尿道にいたる尿路の病気を調べることができます。特別指示がない限りは、尿の出始めではなく、排尿し始めた後の中間尿を採取します。
採取した尿では赤血球や白血球などの血球成分や細菌などの有無を顕微鏡で確認し、分析器を用いて尿中の尿タンパク、尿糖、円柱細胞、結晶成分などを調べます。
尿は体内の老廃物を体外に排泄する役割を担っているため、尿の成分はその人の最近の食事や生活が非常に影響します。正確な検査結果を得るため、尿検査を受ける事が決まったら暴飲・暴食しないのはもちろんのこと、担当医から注意事項があった場合はしっかり守る必要があります。
尿流量検査とは尿が出る勢いを調べる検査で、専用の装置に向かって排尿すると自動で1秒あたりの排尿量を調べることができます。この検査を受けるためには、膀胱内に最低200mL以上の尿がたまっている必要があります。
尿流量測定検査が終わったら、その直後にベッドで仰向けになって下腹部のエコー検査を行い、膀胱に残っている尿量から膀胱の異常を調べます。