前立腺癌はもともと日本で少なく海外で多い癌でしたが、近年は日本で患者数が急増しています。前立腺癌にならないためにも、前立腺癌がどのような癌なのか、どんな特徴があるのか知っておきましょう。
前立腺がんはもともと日本ではあまり患者がおらず、欧米人に多く発生する癌でした。実際、以前のアメリカでは男性が罹患する癌の1位が前立腺がんで、死亡率も2位というものでした。
しかし、日本でも1995年頃から急激に前立腺がん患者が増加するようになり、1975年には罹患数(新たに前立腺癌に罹患する患者)が2000人程度でしたが、2006年には4万人以上に跳ね上がっています。
さらに、2015年の前立腺がん罹患数は9万人を超え、男性が罹患する癌の中で患者数が第一位に躍り出ると考えられています。
前立腺がん患者の増加にはさまざまな要因がありますが、腫瘍マーカーを用いた検査(PSA検査)や画像診断技術の向上により、前立腺がんの発見率が向上したことも患者数の増加につながっていると考えられています。
また、前立腺がんの死亡者数の推移を見ると、1950年は83人だった死亡者数が、2000年には7000人を超え、2015年には1万2000人になると予測されています。
前立腺がんは前立腺のどこにでも発生するというわけではなく、70〜75%は前立腺の外側の辺縁域に発生し、移行域に20%、中心域に5〜10%の割合で発生するとされています。つまり、前立腺がんは前立腺の外側に発生しやすいと言えます。
前立腺は尿道を取り囲んでいるため、前立腺に癌が発生すると尿道が圧迫され、排尿障害が症状として現れるようになります。しかし、前立腺がんが発生しやすい辺縁域は前立腺の外側であるため、尿道を圧迫するほど進行するには時間がかかってしまいます。
この事が前立腺がんの早期発見を難しくしている理由であり、排尿障害などの自覚症状が現れて病院を受診した際には進行癌になっていることが少なくありません。
正常な細胞が分裂する過程で突然変異すると癌細胞となり、そこから際限なく増殖するようになりますが、癌の種類によって増殖の速度はさまざまです。前立腺がんは他の癌に比べて進行が遅いとされ、1個の癌細胞が癌として問題になる大きさになるまでに20〜30年かかるとされています。
そのため、前立腺がんは60歳以上の高齢者に多く、場合によっては他の病気で亡くなってから解剖した結果、前立腺がんが発見されることもあります。この進行の遅さを活かし、患者の年齢や体力、手術のリスクなどを考慮した上で、積極的に治療を行わない待機療法を選択することもあります。
前立腺がんは初期症状が乏しいために、発見された時にはすでに1cm以上の大きさになっている事も珍しくありません。前立腺がんは進行が遅い癌とされていますが、癌の大きさが1cmを超えると増殖する速度も速くなるため注意が必要です。