前立腺癌の悪性度はグリソンスコアを用いて判定します。悪性度が高いほど転移や再発の可能性が高くなるため、癌の治療方針を決める前に悪性度を評価する必要があります。
私たちの身体は無数の細胞が集まってできており、細胞はその組織に合わせた配列で並んでいます。そして、日々分裂と再生を繰り返し、その配列が崩れる事はありません。
しかし、がん化した細胞が現れると不規則かつ際限なく細胞分裂を繰り返すため、決められた細胞の配列は崩れ、そこに腫瘍が形成されます。
このような癌の増殖する速さや転移のしやすさを指標として表したものを「悪性度」といい、悪性度が高いほど癌の治療が難しく、転移や再発の可能性が高くなります。そのため、癌の治療を始める前に癌組織を調べ、悪性度を評価する必要があります。
癌の悪性度は、細胞分裂の際にいかに正常細胞と配列が異なっているかを確認することで評価することができます。癌組織が正常細胞と大差ない分裂速度や配列であれば悪性度は低く、逆に正常細胞とまったく異なる形状であれば、かなり悪性度が高いということになります。
癌は言わずと知れた悪性腫瘍ですが、癌によって悪性度は異なります。そのため、前立腺がんの悪性度を表す指標として「グリソンスコア」が用いられています。
もともとはWHOが提唱した、細胞の分化度から「高分化型腺がん」「中分化型腺がん」「低分化型腺がん」の3段階で悪性度を分類していました。しかし、グリソンスコアの方がより詳しく悪性度を判定できることから、2010年12月より日本では前立腺がんの悪性度を表す指標をグリソンスコアに統一しています。
グリソンスコアとは、組織を構成する細胞の崩れを1から5の5段階で分類し、細胞がどれくらい崩れているかをスコアで表す手法です。
「1」は正常細胞に最も近い高分化型の癌細胞、「5」は悪性度が最も高い低分化型の癌細胞とし、数字が大きくなるほど悪性度が高くなります(右図参照)。
細胞の状態を分類するには、薄くスライスした癌組織を病理医が顕微鏡で調べ、5段階のうちどのパターンの細胞が最も多いか、2番目に多いパターンの細胞はどれかを確認していきます。そして、上位2つのパターンの数値を合計したものが悪性度を表すスコアとなります。
例えば、最も多い細胞のパターンが「3」、2番目に多い細胞のパターンが「4」の場合、グリソンスコアは3と4を足して「7」と判定し、表記は「3+4」とします。これは一番多い細胞のパターンがどれかをわかりやすくするためであり、同じスコアの「4+3」はパターン4の細胞がパターン3の細胞よりも多いため、「3+4」よりも悪性度が高いという判断ができるようになります。
グリソンスコアの範囲は理論上2〜10となりますが、実際は生検で2以下の癌細胞は見つかることがないため、実際は3+3が最低となり、グリソンスコアは6が一番小さな値となります。ここから悪性度をスコア別に分類し、6以下が低リスク群、7が中リスク群、8以上が高リスク群と分類されます。
腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、悪性腫瘍のことを一般に癌と呼んでいます。癌は増殖のスピードが速く、他の臓器にも転移する特徴がありますが、癌にもさまざまな種類があり、発生する部位や細胞形状、分裂の仕方によって性質が異なります。そのため、進行が極めて早い悪性度の高い癌もあれば、進行が遅い穏やかな癌もあります。
WHOの提唱によって、癌は悪性度の違いから「高分化型腺がん」「中分化型腺がん」「低分化型腺がん」の3つに分類され、前立腺がんもこれに当てはまります。「分化」とは細胞が機能を持つ細胞へと変化すること意味し、分化が進むほど正常に近い細胞、分化が進まず未成熟な細胞になると、悪性度が高いということになります。細胞の分化の程度によって癌の悪性度を把握する目安となります。
ただし、前立腺がんの分類は上述のグリソンスコアの方がより詳しく分類・判定できるため、日本では2010年12月から前立腺がんの悪性度を示す指標をグリソンスコアに統一しています。
≪高分化型腺がん≫
細胞分裂の速度がゆっくりであり、進行が遅く、転移もあまりしない癌です。細胞の形や配列も正常な前立腺細胞に近く、悪性度は軽度となります。
≪中分化型腺がん≫
高分化型腺がんに比べて細胞の形や配列が不規則な癌です。そのため、悪性度は中程度となります。
≪低分化型腺がん≫
形が明瞭ではない未成熟な細胞から発生しており、細胞分裂が早く、増殖や転移を起こしやすい癌です。正常細胞にも侵食しているために手術での切除が難しく、悪性度が最も高い癌であるといえます。