一般的に放射線療法といえば体の外部から放射線を癌組織に対して照射する治療法ですが、小線源療法は小さな放射線源を前立腺内に入れ、放射線を癌組織に直接照射する治療法です。小線源療法はブラキセラピーとも呼ばれます。
通常、放射線療法は通院して治療の時だけ放射線を癌組織に照射しますが、ブラキセラピーは放射線源を直接埋め込むため、昼夜問わず常に癌組織に対して放射線照射できるのが特徴です。
放射線を体外から照射する場合、癌組織のみならず正常な組織にも少なからず放射線が当たるため、治療に伴う副作用が発生してしまいます。しかし、放射線源を直接前立腺に埋め込むブラキセラピーの場合、少ない放射線量で癌組織に最大限照射することができるほか、副作用が少ないというメリットもあります。
このブラキセラピーは主に低リスク群の患者に適用されます。放射線治療と言えば手術が行えない患者に行うイメージがありますが、このブラキセラピーは早期の前立腺癌であれば根治も期待できる治療法です。
以前のブラキセラピーでは比較的強い放射線量の線源を一時的に前立腺内に入れていましたが、2003年に放射線エネルギーが比較的弱いヨウ素125の使用が認められたため、現在は前立腺内に放射線源を永久的に埋め込むようになっています。
前立腺に埋め込む放射線源は「シード」と呼ばれており、チタンでできたカプセルにヨウ素125が密封されています。カプセルの大きさは直径0.8mm、長さは4.5mmほどで非常に小さくできています。
前立腺癌は前立腺内に点在している可能性があるため、40〜100個ほどのシードを前立腺内にまんべんなく埋め込みます。埋め込む際は腰椎麻酔をし、肛門から超音波検査に使用するプローブを挿入して前立腺の位置を確認し、会陰部から針を使って埋め込みます。
治療時間は1時間半ほどで、入院期間も3〜4日で済みます。治療時の痛みや副作用もほとんどなく、通院して行う外部放射線治療に比べると患者の負担には大きな差があります。
前立腺に埋め込むシードは放射線源ですが、その放射線量は極めて小さく、エネルギーのほとんどは前立腺や周辺臓器に吸収されます。シードは埋め込んでから2か月経つと放射線量は半分になり、さらに2か月経つとさらに半分に、治療開始から1年が経過する頃にはほとんど照射されなくなります。
さらに、シードの素材であるチタンは生体が拒否反応を起こさない金属であるため、前立腺内にシードを入れたままにしても問題なく、日常生活の制限もありません。
ただし、念のために治療後1年以内の場合は妊娠している女性の近くに長い間いたり、子供を膝の上に長時間のせないような注意が必要です。