前立腺癌の原因には男性ホルモンが密接に関与しており、食生活や遺伝も原因として考えられています。日本人に急増している癌ですので、まずは前立腺癌の原因について知っておきましょう。
前立腺癌を引き起こす直接的な原因ははっきりわかっていませんが、前立腺癌の原因になり得る複数の要因はわかってきています。このような癌の原因となり得る要因を危険因子、またはリスクファクターと呼びます。
前立腺がんの発生や増殖に男性ホルモンが深く関与していることはわかっていますが、どのように癌ができるのか、詳しいメカニズムはまだわかっていません。前立腺には前立腺液をつくる働きがあり、前立腺内には前立腺液をつくるためのたくさんの管状腺があります。
この管状腺の細胞は日々新しい細胞と古い細胞が入れ替わっており、その過程で細胞に突然変異が発生してガン化し、増殖したものが前立腺がんと考えられています。
どうして細胞がガン化してしまうのか詳しい原因はわかっていませんが、前立腺がんの危険因子として加齢や食生活、遺伝が関係することはわかっています。
また、人種別に見ると日本人をはじめとする黄色人種では最も少なく、黒人は日本人の20〜30倍の発生頻度であるという報告もあります。
前立腺がんは欧米で患者数が非常に多いのに対し、従来日本ではほとんど発生しませんでした。しかし、日本の食生活が和食から洋食に変化していくにつれ、前立腺がん患者数も増加するようになりました。
和食は魚や野菜が中心であり、生活習慣病の改善も期待できる健康食ですが、洋食は肉やチーズ、バター、牛乳など動物性脂肪が非常に豊富であり、高脂肪食品を摂り過ぎると前立腺がんのリスクになります。
そのため、日本では食の欧米化によって前立腺がんの患者数が著しく増加しており、いまだこの増加傾向は衰えていません。そのため、近い将来には日本人男性の癌罹患数で、前立腺がんが第1位になると予想されています。自分の食生活を振り返り、動物性脂肪を摂り過ぎないよう食生活を見直してみましょう。
前立腺がんが若い人に発症することはほとんどなく、50歳あたりから発症する患者が現れ、60歳以上になると患者数が増加し、70歳以上で最も患者数が多くなります。
人口10万人当たりの年代別前立腺癌患者数を見ると、60歳代で100人程度ですが、70歳代になると300人を超え、80歳代では600人を超えるようになります。
前立腺の正常な細胞がガン化した場合、その癌細胞が健康上の問題となるまで大きくなるには20〜30年かかるとされており、これが高齢者に前立腺がんが多い理由の一つと考えられています。
また、前立腺がんの発症が高齢者に多いため、癌の進行が他の癌に比べると遅いのも特徴の1つです。そのため、癌の状況によっては無理に治療しない場合もあります。
前立腺がんの発症に遺伝的関与があることがわかっており、父か兄弟のどちらか一人が前立腺がんになった場合、自分も前立腺がんになるリスクは前立腺がんになった家族がいない人に比べて2倍になることがわかっています。
また、父と兄弟、もしくは父と祖父の両方が前立腺がんになった場合、本人も前立腺がんになるリスクは9倍になってしまうという報告もされています。
前立腺がんは一般的に高齢になってから発症しやすくなりますが、遺伝性の前立腺がんの場合は40代から発症しやすくなることがわかっており、自分の家族に前立腺がん患者がいる場合は、「高齢者に発症するもの」と油断せず、早めの受診をお勧めします。