前立腺癌はPSAと呼ばれる腫瘍マーカーを検査する事で発見することもできます。腫瘍マーカーは血液検査で簡単に調べることができますので、まずはPSA検査について知っておきましょう。
腫瘍マーカーとは体内にできた腫瘍から放出されるタンパク質や酵素のことで、腫瘍マーカーは健康な人でも血液中にわずかに存在しますが、腫瘍ができると数値が高くなることから、がんの有無の検査に用いられています。
腫瘍マーカーは腫瘍のできる場所によって異なるため、検出された腫瘍マーカーの種類や濃度によって、どの臓器に腫瘍ができたのか、どのくらい進行しているのかを調べる目安となります。
前立腺がんになると前立腺特異抗原(PSA)と呼ばれる腫瘍マーカーが前立腺から放出されるようになります。
PSAは前立腺の上皮から分泌されるタンパク分解酵素で、通常は精液中に分泌されていますが、前立腺がんになると血液中に混ざるようになります。PSAは癌が進行するほど血液中により混ざるようになるため、血液中のPSA値も大きくなります。
腫瘍マーカーは複数の部位から放出されるものもありますが、PSAはほとんどが前立腺から放出されるため、高い確率で前立腺がんを特定する事ができます。
PSA検査は採血して血液中のPSA値を調べるだけの簡単な検査であるため、前立腺がんが疑われる場合にはまずPSA検査が行われるほか、前立腺がんの治療効果を調べたり、再発の有無を調べる際にも行われます。
PSA値の基準値は1mLの血液中に含まれるPSAが4.0ng以下を正常としてきました。そして4.0〜10.0がグレーゾーンとされ、この範囲の人の20〜30%の割合で癌が発見されています。10.1を超えると前立腺がんの疑いがかなり強くなります。実際、前立腺がん患者の9割がPSA値4.0を超えています。
PSA値 | 判断基準 |
---|---|
4.0以下 | 正常値だが、癌の疑いがまったくない訳ではない |
4.1〜10.0 | 前立腺がん、もしくは前立腺の病気が疑われる |
10.1〜20.0 | 40〜50%に前立腺がんが疑われる |
20.1以上 | 50%以上に前立腺がんが疑われ、しかもかなり癌が広がっている恐れがある |
しかしながら、PSA値が高いからといって必ず前立腺がんというわけではありません。PSA値は年齢とともに上昇していくため、年齢層によってPSAの基準値も異なります。
近年では若い男性でも前立腺がんが発見されるケースが増えたため、従来のPSA4.0以下という基準が見直され、PSA値が2.5以上の場合に精密検査を勧めるようになってきました。
年齢 | PSA基準値 |
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40〜49歳 | 2.5以下 |
50〜59歳 | 3.0以下 |
60〜69歳 | 3.5以下 |
70歳以上 | 4.0以下 |
ただし、前立腺がんに限らず他の前立腺の病気でもPSA値は上昇するため、PSA値が高いからといって前立腺がんと決め付けることはできません。また、PSA値は日々の体調によっても変動することがあります。しかし、前立腺がん以外の病気でPSA値が10を超える事はほとんどなく、前立腺の異常を知る手がかりとして大変有効な検査となっています。
PSA検査は健康診断のオプションでも行える簡単な検査ですので、50歳を超えたら定期的にPSA検査を受ける事をお勧めします。なお、前立腺がんには家系的なリスクも存在するため、親や兄弟に前立腺がん患者がいる場合は40歳から検査を受ける事をお勧めします。