前立腺癌は初期症状が乏しく早期発見が難しい癌の1つです。前立腺癌を早期発見するためには、どのような症状が現れるのかを理解し、少しでも異変を感じたら病院を受診することが大切です。
前立腺がんは高齢者に多く発症するため、他の癌に比べて比較的進行が遅いという特徴があります。しかし、前立腺がんは進行してしまうと周囲の骨盤や脊椎に転移しやすいという特徴もあります。
早期に発見することができれば90%は治療可能ですが、初期症状が乏しいために早期発見が難しく、症状が出た時には80%近くが進行がんや転移がんになっており、これが死亡者数の多い原因になっています。
前立腺がんの初期にはほとんど自覚症状がなく、自分で気付くことは困難です。最初に現れる自覚症状は排尿障害ですが、尿が出にくくなる、頻尿になるなど、前立腺肥大症と非常に症状が似ており、歳のせいにして診察を受けない人がたくさんいます。これが前立腺がんの早期発見の機会を逃す原因になっています。
前立腺癌が進行すると、大きくなった癌が前立腺に囲まれている尿道を圧迫するようになるため、尿が出にくくなる排尿障害が起こるようになります。
前立腺癌は尿道から離れた前立腺の外側(辺縁域)に発生しやすいため、排尿障害が自覚症状として現れた時には前立腺癌がかなり進行した状態といえます。
排尿障害は高齢になると起こりやすい症状の1つですが、排尿障害を歳のせいにせず、症状が現れたらすぐに受診することをお勧めします。
前立腺がんによる排尿障害には、以下のような症状があります。
排尿後にまだ尿が出そうな感じがする(残尿感)
尿意を我慢できなくなる(切迫尿)
頻繁に尿意をもよおす(頻尿)
夜中に何回も尿意をもよおす(夜間頻尿)
尿線が放物線を描かず、チョロチョロとしか出ない(尿線最小)
排尿が終わるまでに時間がかかる(排尿遅延)
尿が途中で止まり、いきまないと出ない(尿線途絶)
尿に薄い血が混じる(血尿)
尿が出なくなる(尿閉)
精液に血が混じる(血精液症)
前立腺がんの大きな特徴のひとつに、骨に転移しやすいことが知られています。他の癌の場合、骨に転移するのは進行癌ですが、前立腺がんの場合は他の臓器に転移がなくても骨に転移することがあります。
骨への転移は前立腺から近い骨盤や腰骨、大腿骨に多く発生し、転移した癌が脊髄神経を圧迫することによって腰や背中、下肢に痛み(鈍痛や刺すような痛み)が起こるようになります。背中や腰の痛みは日常でも起こりやすい症状のため、前立腺がんだと気づかずに整形外科を受診し、癌が発見されるというケースも珍しくありません。
前立腺がんはリンパ節に転移することも多く、リンパ節内で癌が増殖するとリンパ液の流れが滞り、下肢にむくみが生じることもあります。また、尿管が癌に侵されてしまうと、排尿障害だけでなく腎機能が低下することもあります。
前立腺がんになる人の90%以上が60歳以上であるため、本人だけでなく周囲の人もちょっとした体の症状や変化に気を配り、症状の有無にかかわらず定期的に前立腺癌の検査を受ける事が大切です。