前立腺肥大症を診断する際には、その症状から病期を「第1期 膀胱刺激期」「第2期 残尿期」「第3期 尿閉期」の3つに分類しています。それぞれの病状を理解し、自分がどの病期にいるのかを認識しておく事が大切です。しかし、すべての患者にこの分類が当てはまるわけではないので、「第1期だからまだ大丈夫」などと油断せず、早めに診察を受けるようにしましょう。
第1期は前立腺肥大症の中で最も軽い症状に分類され、実際に現れる症状も「排尿に違和感を感じる」程度のものです。そのため、この段階で泌尿器科の診察を受ける人はあまりいません。
具体的な症状としては、尿の回数が増えたり、排尿しようとしてもすぐに排尿ができなかったり、尿の勢いがなくなったり、尿線が細くなったりします。また、下腹部や尿道に不快感や重圧感などを感じる場合もあります。
しかし、まだ排尿は正常に近い状態で残尿もほとんどないため、多くの人は一時的なものだと思います。実際、このような症状は中高年になれば前立腺肥大症でなくても感じることがあります。
しかし、健康な人と前立腺肥大症の人で大きく違うのは、健康な人の症状が一時的であるのに対し、前立腺肥大症は症状が改善する事はなく、むしろ悪化の一途をたどるということです。この時期であればまだ治療は難しくないので、排尿に違和感を感じるようであれば早めに泌尿器科で診察を受けるようにしましょう。
第2期は第1期の症状がさらに進行し、残尿感が現れるようになった状態をいいます。これは前立腺肥大がさらに進んで尿道を圧迫し、排尿してもすべての尿を出しきることができないために起こります。通常、この時期の残尿は30〜50mLとされています。
また、この時期からは排尿の際に意識して力をいれないとうまく排尿できなくなることもあります。あまり膀胱内の残尿が多くなると、尿路感染を起こしやすくなるほか、腎臓機能にも悪影響を与えるようになります。
また、まれに尿閉が起こることもあります。尿閉とは尿道が圧迫されて塞がってしまうもので、膀胱に尿がたまっても排尿できなくなってしまいます。
通常、この第2期ではまだ尿閉は起こっていないのですが、お酒を飲みすぎたり、風邪薬を飲んだりすると前立腺が肥大する事があり、それによって一時的に尿閉を起こすことがあります。尿閉が起こった場合は尿道から管を挿入して尿を出す治療が必要になります。
この時期になると前立腺の肥大はますます進み、ほぼ尿道を塞いでしまうようになります。このような状態を尿閉といいます。尿閉になると膀胱尿がたまっても排尿する事ができず、できたとしてもかなりいきまないと排尿する事ができません。
この時期の残尿は150〜300mLとされています。膀胱の容量が通常250〜400mLである事を考えると、常に尿意を感じるほどの尿がたまっている事になります。
尿閉が続くと、腎臓機能に悪影響を及ぼすようになります。特に、腎臓から膀胱に尿が流れなくなると腎臓内に尿がたまる水腎症になり、そこから腎不全を起こして死に至ることもあります。この時期は早急に尿閉の解消、および前立腺肥大の治療を行う必要があります。